2021/10/03
劇場のお椅子
皆さんは、お気に入りの劇場の椅子はありますか?
帝国劇場のふかふかのお椅子もいいし、新国立劇場のクッション付きの椅子もいいですよね。
小劇場のベンチの椅子もわくわく感があって好きです。赤坂レッドシアターは、お椅子が互い違いの色違いになっていて、今日は何色だろうってドキドキするのも楽しいです。
ばたばたと仕事をなんとか終わらせて、劇場まで走って、劇場前で息を整えて、「やった!今日は観劇だよ神様ありがとう」って思いながら荷物をまとめ、スマートウォッチと携帯の電源を切り、髪の毛をまとめるところまでを術者のような手際で行って、お席についてふうってお椅子に身を沈める瞬間が一番幸せです。
この椅子に座っている限り私は現世とは切り離された物語の世界にいることを許されていて、この椅子にのってフランスにもエジプトにも1789年にも1984年にもいけるっておもうのです。
コロナの時代になって、このお椅子に座れることも、当たり前ではなくなりました。でも、その間でも、舞台芸術の世界の人たちは様々な形で私たちに舞台芸術に触れる機会を与えてくださいました。配信やyoutube、SNSでも。今度は自宅のリビングに魔法の椅子が現れたわけです。
そこに座って、なんならビール片手に舞台が見られる!
なんて素敵な時代になったんだろうと思いながらも、なんとか公演が実現し、劇場にいって「前をすみません!!」なんてかに歩きをしながら自分の席にたどり着き、椅子に座ると「やっぱりこれこれ!劇場のお椅子が最高!!!」って思うのですよね。
これからどんなに科学技術が進歩しても、自宅にいながら匂いも再現できるようになったとしても、きっと劇場のお椅子に座って、独特のほこりっぽい空気のなかで緞帳が開くのを待つ時間はやっぱり最高なんだろうなと思います。
未来の会議・理事
藤田香織